■■■ソーラーカーレース鈴鹿2007製作秘話〜カウル編〜■■■
カウル班長は、先代のカウルのできが気に入らなかった。2004年のデビュー時、尊師にお褒めの言葉をいただいたとはいえ、初めての形状を、時間的な制約で、どうしても満足いく仕上がりまで持って行くことができなかったのだ。パネル側面の凹凸(波打ち)も、パネル内の補強の入れ方も、キャノピーも、フロント形状も、端の処理も、ちょっと眺めただけでも改善できるだろう箇所は列挙にいとまがない。

製作開始までおよそ2年の間にもソーラーカーレース鈴鹿はどんどんレベルが上がっていく。そんな中、あの完成度のカウルが自分の精一杯だと認めるわけにはいかなかった。

製作は地味にコツコツと始まった。
↑2004カウル製作風景↓
2006年GW後、SCR2006本番に向け、タイヤスパッツのマスターモデル造形が着々と進行していった。パテ色(ベビーピンク)で、職人技でつやつや曲面に仕上げられたそれは、のちに嫁に「マンボウ?」といぶかしがられた。そして順調に型取りを終え、高精度な翼断面の軽量なタイヤスパッツを量産することを可能にし、ニューカウル製作への布石となった。

そして2007シーズン、データを取れる試走会までに、試走できるカウルを間に合わせるため、カウル班長の孤独な作業は黙々と続いた。もくもくもくもく・・・もくもくもくもく・・・もくもくもくもく・・・

とは言え、最初から最後まで孤独な作業だったわけではない。カウル班長の膨大な工数をカバーしようと、材料のカーボンパネルやそれでできた部品はT.kura監督や、まつの君の協力無くして成しえなかった。フィッティング作業にあわせて足回りを組むなど、平日にもピヨさんやオレンヂつなぎ君たちの協力をあおいだ。キャノピーの塗装に、本物の塗装ブースを田中鈑金さまに使わせていただいて、効率良く、想像以上に仕上げることができた。日中・夜間を問わずこちらの都合でT.kura邸のガレージを使わせていただいた。数え切れないご配慮とお心遣いに感謝を捧げつつ、数々の製作写真とともに製作作業を振り返る。
まつの君が撮影した製作過程の記録写真の中には、T.kura監督とカウル班長が途方に暮れているカットがある。

もちろん、為す術もなく呆然としているわけではなく、フレーム側との綿密な打ち合わせの様子で、カウルを新作するのであれば(絶対的なサイズは仕方ないにしても)何もかももう一度、効率の良さを考証できる。また、カウルの製作は、材料の切断後や接着後に変更は不可能だ。誤解や思いこみ、意思の疎通の無さは不利益でしかない。製作期間中、時間を繰り合わせては何度となく打ち合わせを行い、完成車両を思い描いていたのだ。

2004年のカウル(旧カウル)は4輪を想定していた。それを2005年にカウル班長の了承を得て、他のメンバーが3輪用にアンダーパネルを用意して流用している。その流用はパネルに無理を強いた。ニューカウルは3輪の現行フレーム専用に作り込むことにした。
↑旧アンダーパネルを前に(4/8) ↑ニューアンダーパネル前で(6/9)
また旧カウルのキャノピーは後ろ部分の処理が甘い。理想のキャノピー形状を実現するとなると太陽電池パネルの配置を変更しなければならない。この変更で全長がすこし短くなる。

1台丸ごと原型を作って、型をとって、張り込んで、補強して、加工して・・・そんな大がかりな作業は、設備的にも、経費的にも、時間的にも難しいので、2004年と同じようにスチレンボードを組み立ててニューカウルを作ることに決定。

レーシングマシンらしい、ぎりぎりのところを模索しながらの改善箇所の追求は尽きなかった。
パネルの基礎完成(4/28) フロント部分造形中(5/12) 太陽電池配線穴開け(5/12) 積層中(5/12)
アンダーパネルにリブ(5/19) フレームを入れてみる(5/19) キャノピー造形中(6/9) 横から(6/9)
3輪の現行フレーム専用に作り込むことにしたアンダーパネルは、フレームにぴったり合うように(感覚的にはアンダーパネルのリブの間にフレームがぴったり入るように)製作を進めていく。アンダーパネル側のいたるところにフレーム固定用のL型カーボンを接着する。
アンダーパネルとアッパーカウル(パネル)は、一段落とし込んで、ぴたっとはまり、つるっと仕上げるため、アンダーパネルの周囲はカーボンを巻いて補強する。アッパーカウル側もフレームの取り付け部分に補強と加工をし、アンダーカウルにのる部分を延長する。
フレームを入れたアンダーカウルとアッパーカウル(パネル)が合体したのは、6/11早朝のことだった。

リアタイヤ周辺を切り欠いている
様子(6/11)
アンダーパネル側の取付用加工 パネル側も補強と加工 合体!(6/11)
つるつるキャノピー(6/9) カーボンを貼った(6/11) キャノピー初載り(6/15)
試走会がせまり、休み無く作業が続き、睡眠時間が削られるにつれ、失敗したり、手こずったりすることが多くなる。また、フィッティングなど神経を使う仕事が増えていく。

フレーム装着後は、本格的な足回りのフィッティング作業が続く。スイングアームやロアアームの周辺は、足がどう動いてもアンダーカウルと干渉しないように、必要最小限を切り欠いていく。タイヤスパッツは曲面のアンダーカウルにぺったり合うように加工する。タイヤとホイールに干渉しないように、路面側も必要最小限の穴を切り欠く。タイヤ交換を想定して、横を開閉可能にする。

もちろん新作キャノピーも同時進行で、とにかく本番とほぼ同じ外観を整え、試走会当日の早朝、なんとかシェイクダウンを果たした。
↑アンダーカウルやタイヤ
スパッツの干渉をチェック


[試走会の写真も まつの提供]
6月25日(月)
鈴鹿サーキット

6:00〜
競技車両搬入
7:30〜8:30
受付
8:30〜
ブリーフィング
9:00〜10:40
試走会1回目
13:00〜14:40
試走会2回目

※車検は行われません。

↑未塗装のキャノピーとスパッツの白ガムテでテスト走行っぽい→
この試走会のあと、タイヤスパッツ・キャノピーのフィッティングと改良と加工が続いた。
カーボン製のヒンジ(7/21) キャノピーほぼ完成(7/22)
そしてやっと、7月中旬から田中鈑金さまへ、キャノピーとヘルメットの塗装作業に通う。毎日お昼ごはんをごちそうになり、晩まで作業をさせていただいた。(せっぱ詰まっていたので塗装作業の写真がたくさんお世話になったにもかかわらず一枚もない。掲載できないのがとてもとても残念。)
できあがったキャノピーとヘルメット(8/5撮影:竹本さん)
本番直前の木曜日の晩、ガレージからの搬出はいつになくスムーズだった。もうカウル班長はセカンドドライバーとして本番に備えて眠ることができた。
←レース前、ピットに置いてあったタイヤスパッツ。これも8月5日に竹本さんに撮影していただいたカットである。今年は本当にたくさんの写真を撮っていただいたが、このニューカウルのおかげでカウル班長は苦々しい思いで写真を拝見しなくてすんだと言う。また、ニューカウルは各方面からも高く評価していただいた。カウル班長は時折、満足げにサイトを見ている。
そして最後に来年の新兵器(→) 見たまま、キャノピーの穴をふさぐ『ふた』である。でも、これたぶん2008年大活躍で、メンバーの喝采の的だと思う。(み)

仕上がった車体は、この他リザルト竹本写真館でご覧いただけます。
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